抄録
高等植物の光化学系II複合体に強光照射を行った場合には光阻害が起こり、その構成サブユニットは酸化的損傷を受ける。その結果、反応中心D1蛋白質が周囲のタンパク質と架橋することが知られている。還元側光阻害が起こり光化学系II複合体のストロマ側が損傷を受けた場合、D1蛋白質は反応中心D2蛋白質、アンテナクロロフィル結合蛋白質CP43、シトクロームb559のαサブユニットと架橋することが明らかになっており、これはD1蛋白質がそれぞれのサブユニットと近接していることを示している。一方、OEC33を取り除いた光化学系II複合体に光照射を行うと酸化側光阻害が起こり、D1蛋白質はCP43とのみ架橋する。この架橋はOEC33を保持しているかまたはOEC33を取り除いたあと再結合させた光化学系II複合体では起こらない。つまりD1蛋白質、CP43、OEC33は光化学系II複合体のルーメン側で近接しており、またOEC33は通常この架橋を防いでいると考えられる。以上の結果から高等植物の光化学系II複合体においてD1蛋白質とCP43はストロマ側・ルーメン側のいずれにおいても近接していると考えられ、これは近年報告されたシアノバクテリアの光化学系II複合体の結晶構造解析の結果と一致している。一方、高等植物の光化学系II複合体におけるOEC33の存在状態とその位置はシアノバクテリアの場合とは異なることが示唆された。