抄録
光照射下では光化学系 II(PS II)反応中心の D1 タンパク質が選択的に損傷を受け PS II が解体され、新生 D1 タンパク質と他のタンパク質成分とから PS II が再構成される。この PS II の解体・再構成サイクルでは、PS II の 3 種類の表在性タンパク質は一旦 PS II から遊離した後、再構成された PS II に再結合すると考えられている。
ホウレンソウ PS II 膜標品に強光(4 mE m-2 s-1)を照射すると OEC33 は徐々に PS II から遊離し、3 時間で約 4 割が遊離した。SDS/urea-PAGE の後銀染色で検出すると、トリス処理で単離した OEC33 はシャープなバンドを形成したのに対し、強光照射下で遊離した OEC33 のバンドは高分子量側にテーリングしたことから、強光照射下で OEC33 の一部は損傷を受けることが示された。強光照射で遊離した OEC33 の urea/NaCl 処理 PS II への再結合を調べた実験で、シャープなバンドを形成する OEC33 成分のみが再結合することがわかった。スーパーオキシド除去剤あるいは金属キレート剤存在下で強光照射すると、OEC33 の遊離は影響を受けなかったが、損傷は大きく抑えられた。また OEC33 をヒドロキシルラジカルにさらすと強光照射と同様に損傷を受けることから、光照射下で生じたスーパーオキシドからヒドロキシルラジカルが生成し、これが遊離した OEC33 に損傷を与えることが示唆された。