抄録
ダイズ種子貯蔵タンパク質βコングリシニンのβサブユニットをコードする遺伝子は、硫黄栄養により転写レベルで制御される。この遺伝子の硫黄応答領域235bpをカリフラワーモザイクウィルス35SRNAプロモーターに挿入することにより、本葉でもこの遺伝子の硫黄応答を観察できるようになった (Awazuhara et al. 2002)。また、上記キメラプロモーターにGFP遺伝子を繋いで形質転換したシロイヌナズナNOB株では、硫黄欠乏によりGFPの蛍光強度が増加した (Ohkama et al. 2002)。本研究では、NOB株の種子をEMS処理した後代から,GFP蛍光強度を指標にして変異株を単離した。約4万株のスクリーニングにより25株の変異株候補を得た。戻し交雑で1遺伝子変異と確認され、さらに、GFPの蛍光強度とmRNA量に相関のあった株について解析を行っている。
このうち,nbm1-1 (NOB mutant)は、培地の硫黄濃度に関わらずGFP蛍光が親株であるNOB株よりも強い。内在性の硫黄応答性遺伝子Sultr2;2, APR1. SAT1(いずれも硫黄代謝系の酵素の遺伝子)の発現も強くなっていた。また、硫黄欠乏のシグナルとされているO-アセチルセリン濃度が高かった。nbm1-1変異の原因遺伝子は、5番染色体上腕にあると分った。Awazuhara et a l. (2002) Plant Sci. 163: 75-82 Ohkama et al. (2002) Plant Cell Physiol. 43: 1266-1275