抄録
地球上には多種多様な生物が生存し、互いに作用し合い何らかの影響を受け合っている。この現象はアレロパシー(他感作用、生物間相互作用)として2000年以上の古来より観察がなされてきている。アレロパシーは地球において、長い年月をかけて自然生態系内で作り上げられてきた作用の一つである。このようなアレロパシーに関与する物質の生合成や放出・輸送、およびアレロパシー物質への感作過程が、微小重力環境において変化するかいなかについて、強い阻害的アレロパシー活性を示すムクナを植物材料とし、その原因物質の一つであるL-爪―パを指標として研究した。微小重力環境は3D-クリノスタットを用いて擬似的に生成した。滅菌した市販のポットに0.8%の低温ゲル化寒天を注ぎ、ムクナ幼植物を植えた。検定植物としてレタスとシロイヌナズナをムクナの周りに播種した。3D-クリノスタットによる微小重力実験群では、地上対照群に比べてアレロパシー活性が低い傾向にあった。ムクナの代わりにL-ドーパを寒天培地に与えた場合には、微小重力環境下でもレタス、シロイヌナズナともに地上対照群と同じく著しい成長阻害が認められたことから、L-ドーパを含むアレロパシーに関与する物質のムクナでの生合成が微小重力環境で減少するか、生体内での循環が減少している等の可能性が示唆された。放出後のアレロパシー物質の拡散輸送過程の寄与なども詳細に検討している。