抄録
植物が硫黄欠乏にさらされると、硫黄同化系で働くいくつかの酵素の活性および遺伝子発現が上昇する。シロイヌナズナでは14種の硫酸イオントランスポーター(Sultr)が存在しており、このうちSultr2;1を含むいくつかのSultrのmRNAは、シロイヌナズナの地下部において硫酸イオン濃度の減少に応答して蓄積する。現在までに植物体内外の硫黄濃度の感知機構、硫黄栄養に応答した遺伝子発現の調節機構についてはほとんど知られておらず、SultrのmRNA蓄積機構を明らかにすることで、植物の硫黄栄養条件に対する適応機構に迫りたいと考えている。各種阻害剤を用いた解析から、硫黄欠乏時のSultr2;1 mRNAの蓄積は転写後制御によっていることが示唆された。Sultr2;1は根においては内鞘細胞と木部柔細胞で発現が認められる。Sultr2;1について5'領域::Luc::3'領域を導入した形質転換植物を作製し、硫黄欠乏時のレポーター活性の変化を調べたところ、3'領域を含む植物のみで硫黄欠乏時のレポーター活性が増加した。5'領域:: GFP::3'領域を持つ植物でも同様に、GFPの発現が観察された。Sultr2;1 3'領域には、mRNAの安定性制御に関わるDST-element様の配列が含まれており、硫黄栄養応答にもこの配列が関わる可能性が示唆された。