日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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チラコイド膜への蛋白質輸送に関与するcpFtsYのトウモロコシ変異株を用いた解析
*朝倉 由香里広橋 利哉菊地 真吾Susan BelcherErin OsbornAlice Barkan矢野 覚士寺島 一郎中井 正人
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p. 715

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抄録
集光性クロロフィル結合蛋白質(LHCP)の葉緑体チラコイド膜への挿入に関わるシグナル認識粒子(SRP)依存性経路では、cpSRP43、54、SRPレセプターのcpFtsYおよびALB3の関与が示唆されているが、各蛋白質の機能の詳細は明らかでない。本研究では葉緑体形成過程におけるcpFtsYの役割の解明を目的に、トウモロコシのcpFtsYの遺伝子座にMu挿入変異を有するcsr (chloroplast SRP receptor) 1-11-3変異株を解析した。エキソン部分に挿入変異を有するcsr1-1変異株ではcpFtsYは全く発現しておらず、葉は黄緑色だった。一方、イントロン部分に挿入変異のあるcsr1-3変異株は、cpFtsYがわずかに発現しており、葉は薄緑色であった。両変異株は劣性ホモで、播種後2週間目に枯死した。変異株単離葉緑体へのLHCPの輸送実験を行ったところ、包膜透過は野生株と同程度であったが、チラコイド膜への挿入が顕著に減少していた。csr1-1変異株の葉緑体では、チラコイド膜のスタックが著しく減少しており、維管束鞘細胞では澱粉粒の減少が観察された。また、csr1-1変異株ではLHCPだけでなく光合成に関わる様々なチラコイド膜蛋白質の減少が確認され、葉緑体の光合成装置に多面的なdefectが生じていることが明らかになった。
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© 2003 日本植物生理学会
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