抄録
C4植物の維管束鞘細胞(BSC)葉緑体は、維管束に対して遠心的または求心的に配列している。シコクビエにおいて伸長成長中の葉組織ではBSC葉緑体はほぼ均一に分布しているが、伸長停止後は短期間のうちに維管束側に移動し、求心的配列をとる。また、遠心処理により葉緑体の求心的配列を乱れさせても、大半の葉緑体は数時間以内に元の求心的位置へと移動する。これらの葉緑体の移動には、アクチンフィラメントが関与していることが阻害剤を用いた実験より推察されているが、その分子機構は明らかになっていない。そこで本研究では分子機構解明の足掛かりとして、シコクビエ葉細胞内のアクチン骨格の可視化を行った。抗アクチン抗体を用いた蛍光抗体法により、BSCにおいて細胞膜周辺と葉緑体を囲むアクチン骨格が観察された。また、若いBSC葉緑体の維管束側への移動過程、遠心処理で乱れたBSC葉緑体の配列回復過程でも葉緑体周辺にアクチン繊維の存在が確認された。これらのアクチン繊維がBSC葉緑体の配列の維持や細胞内での移動に関与していることが期待される。