抄録
生態系の基盤としての土壌環境に係る影響評価,リスク評価が注目されている.本研究では,保全対象としての土壌生態系に対する化学物質が及ぼすリスクの評価手法を構築し,生態系の土壌機能保全および化学物質管理の一部として活用することを提案した.その事例としてダイオキシン類のリスク評価を取り上げ,土壌生態系の食物連鎖の底辺(下位)にある土壌無脊椎動物,土壌微生物それぞれに対して,有害性評価,曝露評価,リスクの判定を実施し,土壌微生物(分解者)と土壌無脊椎動物(一次消費者)に対して,許容可能なリスクレベルを維持するための土壌環境濃度を推定した.本研究で示した土壌生態系に対するリスク評価手法は,生態系の基盤としての土壌環境の影響評価と化学品管理のための自主的なリスク評価に有用な知見を与えると考えられる.