日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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タバコ培養細胞BY-2のエリシター誘導性プログラム細胞死過程におけるオルガネラの動態の解析
中村 衣里郷 達明東 克己*朽津 和幸
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p. 736

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抄録
タバコ培養細胞(BY-2)にタンパク質性エリシター(cryptogein)を処理すると、細胞質の凝集、収縮など細胞の形態変化を伴う細胞死が誘導される。この細胞死の初期過程では、Ca2+、pH、Cl-などの一連の特徴的な変化のパターンを示すイオンフラックスが誘導され、続いて活性酸素の発生が誘導される(昨年度本大会)。本研究では、こうした細胞膜上の初期応答反応に続いて誘導される細胞死実行過程の解明を目的として、オルガネラの変化を解析した。細胞死に先立ち、数時間以内にミトコンドリア還元酵素活性がほぼ完全に失活し、ミトコンドリア膜電位の脱分極が誘導された。このミトコンドリアの変化はイオンチャネル阻害剤により完全に抑制された。ミトコンドリア活性低下が細胞死誘導に重要な役割を果たしている可能性がある。また液胞内腔を特異的に蛍光染色して観察したところ、細胞死が誘導された細胞では、液胞構造は崩壊し、蛍光は失われていた。液胞崩壊と細胞死誘導との関連性を調べるため、死細胞を特異的に染色するEvans blueとともに二重染色して解析したところ、液胞の蛍光消失は、細胞死にわずかに先立つ現象であると考えられた。そこで細胞死過程の連続観察を行ったところ、ダイナミックな形態変化を示す液胞が、細胞質の凝集が誘導される直前に崩壊することが示唆された。エリシター誘導性プログラム細胞死実行過程における液胞の動態変化とその役割について議論する。
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© 2003 日本植物生理学会
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