抄録
植物病原菌由来のタンパク質性エリシター(cryptogein)は、タバコ培養細胞BY-2に感染シグナル誘導性プログラム細胞死(PCD)を誘導する(門田ら、2002年度本大会)。このPCDは細胞周期依存的であることが明らかとなり、このことを利用して高度に同調的なPCDを誘導する実験系を構築した。本研究では、プロテアーゼに対する各種特異的阻害剤を用いて、こうしたエリシター誘導性PCDの過程にプロテアーゼが関与する可能性を検討した。その結果、AEBSFやTLCKを含む複数の阻害剤がPCDを顕著に抑制した。抑制効果の程度は阻害剤により大きく異なっていた。一方、PCD過程のどの過程にプロテアーゼが関与するのかを調べる目的でエリシター処理前後に阻害剤を投与したときのPCD抑制効果を調べたところ、AEBSFはエリシターシグナル伝達の初期過程に効果を示すことが示唆された。このPCDの過程には、Ca2+、pH、Cl-など一連の特徴的な変化のパターンを示すイオンフラックスの誘導や活性酸素種の発生(郷ら、本大会)、それに引き続いて誘導されるミトコンドリアの活性低下などのオルガネラの変化(中村ら、本大会)が関与すると考えられる。これらの初期応答反応とオルガネラの変化を指標として、PCD過程における各種プロテアーゼの作用点について解析した結果について報告する。