日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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チューリップ花弁の老化過程
*石川 隆之Abul Kakam Azad澤 嘉弘石川 孝博柴田 均
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p. 738

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抄録
プログラム細胞死(PCD)は一般的に形態学的変化と生化学的変化に関連するプロセスとして遺伝学的に定義されており、恒常的な組織の維持・発達・防御反応に重要である。これまで動物細胞のアポトーシスは広く研究されているが、植物については幅広い生化学的研究はそれほど報告されていない。PCDは花弁細胞で急速に起こるため、しばしば組織老化を分子レベルで解明するためのモデル系に用いられる。花弁細胞死は酸化酵素により生産される活性酸素種(ROS)の増加と、酸化防御酵素の活性減少による場合がある。また老化過程では種々のプロテアーゼやヌクレアーゼの活性化による核酸と蛋白質の減少が観察されている。本研究では開花から花弁脱離までが比較的長いチューリップをPCD実験のモデル系として選択し、PCD過程で変化する重量・タンパク質・抗酸化系酵素活性・エチレン放出量・DNA断片化・過酸化水素濃度・温度に依存した花弁運動について分析した。花弁の開閉運動は初期には活発であるが、老化中期から運動能力が低下する。同時期にはDNA分解が観察され、同時にDNase活性・プロテアーゼ活性も上昇した。老化終期におけるエチレン放出量の急激な増加は、過酸化水素含量の急激な増加に続いて生じていた。これに並行して抗酸化酵素の一種であるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)活性の低下が生じていた。チューリップ花弁の老化過程は、動物細胞と同様のPCD過程であると考えられる。
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© 2003 日本植物生理学会
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