抄録
マメ科植物の根粒細胞内で特異的に生産されるレグヘモグロビン(Lb)は,根粒菌とマメ科植物の共生窒素固定系において特徴的な機能を有するタンパク質の一つである。本研究では,マメ科のモデル植物であるミヤコグサ(Lotus japonicus)のLb遺伝子の発現調節機構を解明するために,Lb遺伝子のnodulin motifを含むプロモーター領域とGFP構造遺伝子との融合遺伝子(Lbpro-GFP)を構築し,Agrobacterium rhizogenesを介したミヤコグサの形質転換を試みた。A. rhizogenesの感染により毛状根を誘導し,融合遺伝子の導入をPCRで確認した。形質転換された毛状根には,ミヤコグサ根粒菌(Mesorhizobium loti MAFF303099株)の接種により根粒が形成され,その根粒組織は,通常根に形成されたものと違いはなかった。また,毛状根に形成された根粒よりmRNAを抽出し,LbとGFPの発現をRT-PCRで確認した。次に,毛状根に根粒菌を接種し,蛍光顕微鏡にてGFP発現観察を経時的に観察した。その結果,感染の初期から根粒の発達過程で,根の維管束付近でGFP由来と考えられる蛍光を検出した。このことは,Lbが共生領域以外の組織で発現し,機能している可能性を示すものである。