抄録
Ca2+シグナリング系は植物のシグナル伝達の中枢を占めると考えられている。その初発反応を担うのはCa2+チャネルの開孔である。植物の形質膜や細胞内Ca2+貯蔵オルガネラにはCa2+チャネルが存在し、様々なシグナルに応答して活性化され[Ca2+]cyt上昇を引き起こす。動物のL-タイプCa2+チャネルのα-サブユニットは、6つのTM領域と5、6番目のTM領域に挟まれた一つのイオン透過孔形成部位(p-ループ)からなる6TM1Pドメインが4つ集合し、4つのp-ループを中央に配置してイオンチャネルを形成する。演者らはこれと二次構造において高い相似性を示す蛋白質をコードするcDNA・ AtTPC1をシロイヌナズナから単離し、昨年の年会において報告した。ゲノムブロット及びデータベース解析の結果AtTPC1ホモログは広く植物種全体に保存されていた。AtTPC1は二つのドメインからなる蛋白質をコードしており、二量体として機能すると考えられる。また、両ドメインを繋ぐリンカー領域には二つのEF-ハンドモチーフ(EF-1,2)と、動物のK+-チャネルの4量体形成に関わる配列が含まれている。EF-1を点変異導入により破壊した蛋白質は酵母において野生型よりも強いチャネル活性を示した。