抄録
エクオリンは細胞のカルシウムシグナリングを解析するのに広く利用されている。演者らは、Baubetらの報告を元にGFPとエクオリンから成るキメラタンパク質を作製した。Ca2+結合によるエクオリンの発光エネルギーがGFPへ転移してGFPが発光するこのタンパク質には、様々な利点があり、動植物体での利用が期待される。本研究では、このキメラタンパク質と当研究室で単離されたシロイヌナズナのカルシウムイオン透過性チャネルAtTPC1を出芽酵母のカルシウムチャネルcch1 変異体に導入し、AtTPC1の機能解析を行った。
AtTPC1は、糖欠乏させた酵母で起こるグルコース誘導性サイトゾルカルシウム濃度([Ca2+]cyt)上昇レベルを増大させた。また、この[Ca2+]cyt上昇は、カルシウムキレート剤のBAPTA、カルシウムチャネルブロッカーのLa3+で阻害されたことから、Ca2+は細胞外からAtTPC1を通して取り込まれたことが分かった。また、このグルコース誘導性[Ca2+]cyt上昇はK+特異的に阻害された。加えて、AtTPC1は代替放射性核種86Rb+の酵母への取り込みを促進したことから、Ca2+、K+選択性イオンチャネルであることが示唆された。