抄録
私達はこれまで陸生ラン藻(イシクラゲ)の乾燥耐性を調べ、本学会で発表してきたが、その特徴は以下の通りであった。
1)光合成色素タンパク質複合体(光化学系I、II反応中心複合体、フィコビリゾーム)が乾燥により、吸収した光エネルギーを熱に変換するよう構造変化を起こす。2)乾燥状態では光化学系I、IIともに反応中心の活性は失活しているが、活性回復にはほんの少量の水分で十分である。3)乾燥耐性のない種では光合成活性の低下に比例した光化学系II反応中心活性の低下がない。
今回は上記ラン藻の結果と比較しながら、水環境の異なる場所で生育する7種類の蘚苔類(ギンゴケ、ハイゴケ、ゼニゴケ、カマサワゴケなど)を用い、水分含量変化に伴う光合成諸活性の変化について調べた結果について報告する。
1)光化学系IIの変化蛍光(Fv)の顕著な減少が見られたが、光化学系Iにおいては光エネルギーを熱に変える変化は見られなかった。光化学系IIの失活は光エネルギーが反応中心に到達できないためと考えられる。2)細胞内の水ポテンシャルの低下に対する活性の低下はラン藻に比較してより小さい。3)乾燥耐性のない種では、極度に水分を失った状態でも光化学系I、II反応中心活性が維持された。この点はラン藻の場合と同様で、乾燥耐性の有無との関連性が強いと考えられる。