抄録
根は,水分勾配刺激に応答して水分屈性を発現し,重力屈性等とともにその姿勢を制御している.近年,重力屈性については分子生物学的な解析が行われるようになってきた.しかし,水分屈性の発現機構については,根冠が刺激受容器官であること,オーキシン,アブシジン酸およびカルシウムイオンの関与することなどが知られているものの,その刺激受容やシグナル伝達に関する分子機構はほとんど解明されていない.そこで本研究では,モデル植物のシロイヌナズナを用いた根の水分屈性突然変異体スクリーニング法を開発し,EMS処理をしたM2種子約2万個から,野生型に比較して水分屈性の低下した突然変異体の単離を試みた.その結果,これまでに12株の水分屈性突然変異体rhy (root hydrotropism) が見出された.それらのrhy突然変異体について水分屈性の経時的な発現,重力屈性,光屈性,波型成長等を解析した結果,水分屈性特異的な突然変異体(rhy1)や,水分屈性を含む複数の屈性に異常のある突然変異体(rhy2,rhy3,rhy4)が見出された.現在,Landsberg erectaと交配したF2集団のDNAを用いて,変異遺伝子のマッピングを行っている.