抄録
管状要素の分化過程では、アクチン繊維と微小管が協調的に、細胞長軸に対して垂直な二次細胞壁のパターン形成を制御している。マウスtalinのアクチン結合サイトや、マウスMAP4の微小管結合サイトをGFPにつないだ融合遺伝子 (GFP-talin・GFP-MAP4)を金粒子にコーティングし、ヒャクニチソウ管状要素分化系の細胞にパーティクルボンバードメントにより導入することで、管状要素二次壁形成前後の細胞骨格系の三次元的な動態が明らかになってきた。しかし、刻々とその配向を変化させるアクチン繊維と微小管の具体的な相互作用の機構を知るためには、二つの細胞骨格を二重標識する必要があった。そこでGFPの蛍光色の異なるバリアントであるCFPとYFPに、マウスtalinとマウスMAP4をつないだ融合遺伝子を作成した。二種類のプラスミドを同時に金粒子にコーティングし、ヒャクニチソウ葉肉細胞に導入したところ、生細胞でのアクチン繊維と微小管の二重標識に成功した。我々はまた、蛍光標識したWGAレクチンを用い、肉眼ではとらえることのできないごく初期の二次壁成分の沈着についても観察をおこなっている。このような多重蛍光標識により明らかになりつつある、管状要素二次壁のパターン形成における細胞骨格の役割について紹介する。