日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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転写型ジーンサイレンシングに関わる因子MOM1の機能
*土生 芳樹
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p. S47

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抄録
シロイヌナズナのmom1変異体では、転写型ジーンサイレンシングを受けている外来性多コピー導入遺伝子やセントロメア近傍に存在する反復配列からの転写活性化が見られるが、ddm1met1変異体とは異なり、ゲノム全体のDNAメチレーションの低下は見られず、形態的異常も観察されない。しかし、マイクロアレイを用いた発現解析の結果から、機能的なタンパク質をコードしている複数の内在性遺伝子領域由来の転写産物がmom1変異体で過剰に蓄積していることが示された。これらの中には植物体の正常な生長に必須の遺伝子も含まれており、現在これらの遺伝子の一つに関してその遺伝子領域のDNAメチレーションの状態や転写産物の解析を進めている。
MOM1遺伝子がコードする約220kDの核タンパク質は酵母や動物のSWI2/SNF2型クロマチンリモデリングタンパク質のATPase領域と低い相同性を示すが、構造的にそれ自体がクロマチンリモデリング活性を持っているとは考えにくい。最近発表されたイネゲノム配列の解析結果から、イネにはMOM1様タンパク質をコードする2つの遺伝子が存在することが示された。2つのイネMOM1様タンパク質にはシロイヌナズナのMOM1には見られないクロモドメインが存在し、この領域を介した他の因子との相互作用によってサイレンシングの維持に関わっている可能性が考えられる。
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© 2003 日本植物生理学会
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