日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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光化学系I循環的電子伝達は光合成と光障害回避の両方に必須である
*鹿内 利治
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p. S52

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抄録
高等植物の光合成電子伝達には、教科書的に記述されるZスキームに加え、光化学系I循環的電子伝達の存在が古くから知られている。この循環的電子伝達は、antimycin A感受性のFQRにより触媒されるものと呼吸鎖関連複合体のNDHにより触媒されるものの二本の経路からなる。我々はクロロフィル蛍光イメージングを用いて、FQR活性を欠くシロイヌナズナ変異株pgr5を単離し、この経路が様々な環境下で光化学系IIでの過剰エネルギーを捨てる反応(熱散逸)の誘導に必須であることを示した。また同様の手法で、NDH活性を欠くシロイヌナズナcrr2を単離した。crr2は葉緑体ndhB遺伝子の転写後発現制御が異常な変異株で、NDH活性を欠くが、光合成電子伝達に対する影響は、pgr5に比べるとわずかなものであった。さらに光化学系I循環的電子伝達活性を完全に欠く、pgr5 crr2二重変異株を作成した。二重変異体では、弱光下でも光合成電子伝達が著しく影響を受け、光化学系I循環的電子伝達が、熱散逸誘導のみならず光合成にも必須であることが明らかになった。すなわち、ATP合成の代謝および光障害回避の生理機能の両面から、光合成電子伝達はZスキームのみでは完結せず、光化学系I循環的電子伝達が極めて重要な機能を果たしている。
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© 2003 日本植物生理学会
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