抄録
光阻害耐性は、同一種の葉でも生育条件によって大きく変化する。これは、生育条件によって光合成能力や光防御系などのエネルギー消費能力が変化するためであると考えられている。多くの研究が様々な光防御系の能力を調べ、その光阻害耐性との関連を考察してきた。しかし、光阻害耐性に対する各防御系の貢献が定量的に明らかになっているとは言い難い。この理由はいくつか指摘できる。1)一度に少数の光防御系しか調べないため、他の防御系の影響と区別できない。2)多くの防御系の生育環境応答は似ているため、定性的な区別さえ難しい。3)光阻害を引き起こす、とされる過剰エネルギーが定量化できていないため、防御系の貢献も不明。我々は、多くの防御系を同じ条件で比較するための実験系を確立し、これらの問題の克服を試みた。1)異なる栄養・光条件で育成することにより、各防御系の能力が様々に異なる葉を得た。2)Demmig-Adamsら (1996) のモデルを用い、葉が吸収した光が電子伝達や熱放散に分配される割合を推定した。この研究の結果、生育条件による各光防御系の能力の違いが明らかになった。電子伝達にも熱放散にも分配されないエネルギーは、D1タンパク質の再合成を止めた状態でのPSIIの不活性化速度と高い相関があり、この過剰エネルギーの量がPSIIの光不活性化速度を決定していることが示唆された。