日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナのねじれ変異と回旋運動
*橋本 隆
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p. S61

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抄録
植物の軸器官が周期性を持って揺れながら伸長する回旋運動の分子機構は不明であるが、そのモデルは幾つかの観測結果を説明できなければならない。1)重力は回旋運動に必要ではないが、影響を与える、2)機械的な刺激は回旋運動を素早く変化させる、3)回旋運動には細胞伸長が必須である。回旋運動はつる性植物などのごく一部の植物に於いてのみ明らかな生存上の優位性が考えられるが、この現象は植物界に普遍的に見られる。
我々は根、胚軸、葉柄、花茎などの軸器官が右又は左方向にねじれて伸長するアラビドプシスねじれ変異株を研究してきた。これまでの研究により表層微小管の配向異常がねじれの原因であること、ねじれ原因遺伝子は表層微小管の配向制御に重要な役割を担うことが判明した。表層微小管が右又は左巻き方向に傾いて配向されることにより、セルロース微線維も同様の方向に傾いて配向し、細胞の伸長軸が左又は右方向にずれると考えられる。また、野生型のアラビドプシスの根は必ずしも重力方向にまっすぐに伸長するのではなく、エコタイプにより左にずれて伸長すること、すなわち野生型といえども細胞は厳密な縦方向(器官軸に対して平行方向)から若干ずれて伸長する可能性が示唆された。こうした結果を踏まえて、表層微小管の配向のゆらぎが回旋運動の原因となっている可能性を探る。
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© 2003 日本植物生理学会
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