日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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イネ幼葉鞘の回旋運動―光の影響、および重力との関係
*吉原 毅飯野 盛利
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p. S62

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抄録
暗黒条件で育てたイネ芽ばえの幼葉鞘は規則的な回旋運動を行っていることを見出した。この回旋運動は光を受けて停止する。これはフィトクロムを光受容体とする反応で、超低光量反応(VLFR)と低光量反応(LFR)が関与していることを突き止めた。さらにフィトクロム欠損突然変異体の解析から、前者にはフィトクロムAが、後者にはフィトクロムBが働いていることを明らかにした。また回旋運動に対する重力刺激の影響を調べ、1)芽ばえを傾けて重力屈性を誘導すると、回旋運動の位相が同調すること、2)重力刺激を与えるタイミングによっては回旋方向が逆転すること、3)クリノスタットで回転させると回旋運動が消失することなどを見出した。赤色光を短時間与え、冠水することによって、よく成長するが回旋運動はしない幼葉鞘が得られる。この幼葉鞘に短時間の重力刺激を加えると、それが引き金になって回旋運動が再開することを見出した。また、再開した回旋運動の振幅は重力刺激強度に依存した。これらの結果は回旋運動の仕組みに重力受容が密接に関与していることを物語っている。さらに、重力屈性異常のイネ突然変異体lazyでは、幼葉鞘の回旋運動が全く観測されなかった。lazy突然変異の原因遺伝子(LAZY)の産物は、回旋運動と重力屈性に共通する重力受容機構に関与していると考えられる。現在、LAZYのマップベースクローニングを進めている。
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© 2003 日本植物生理学会
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