抄録
我々は、植物の環境応答を非破壊、経時的にモニターする系の開発のプロセスでシロイヌナズナ(Columbia)の花茎が暗所で極端に屈曲する回旋運動をすることを偶然に見いだした。現在、植物体を上方向と横方向からビデオ撮影しその画像から回旋速度、屈曲角度、花茎の伸長といった数値を計算することで現象の解析を行っている。植物の生長に伴う回旋運動は多くの植物で良く知られた現象であり、シロイヌナズナにおいても胚軸が伸長する際に回旋運動をすることがすでに報告されているが、花茎の回旋運動は、胚軸の運動に比べ動きが大きいため観察が容易であり、また、光条件によって影響を受け暗所でその動きが非常に大きく可視的になることが特徴である。すなわち、明条件下で生育させた植物体の花茎をビデオ撮影すると、伸長に伴う細かい回旋運動が認められるが、この花茎を暗条件に移し赤外線ビデオによって撮影を行うと約12時間後より回旋速度が遅くなり花茎の屈曲角度が極端に大きくなる様子が観察される。また、その途中に光をあてると屈曲角度は大きいまま回転速度が上昇する。この光条件変化に反応した花茎の回旋運動の変化は同じシロイヌナズナでもエコタイプが異なるとその様式が大きく異なる。我々は回旋速度と屈曲角度を決めるメカニズムは独立していると考え、それらのメカニズムが特に外部環境によってどのような影響を受けるのか研究を進めている。