日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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イネ幼根の回旋運動-幼葉鞘との関係
*谷本 英一吉原 毅飯野 盛利
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p. S63

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抄録
回旋運動は,種子植物から菌類にいたるまで広く植物界に観察される。Arabidopsis(特にエコタイプWassilewskjia とLansberg)の根では,強い右回り特性があり,遺伝子変異によって逆向きが生じるという。このことは,回転の左右性が遺伝的に決まることを示唆している。しかし,根の回旋運動の方向は接触刺激によって変わるという報告もある。一方,前講演で示されたようにイネでは幼葉鞘の回旋運動が光と重力の制御を受けているので,その制御が根にまで及ぶのか否かという疑問が生じる。そこで,我々は,イネ芽ばえを用い,幼葉鞘と幼根の運動を同時に記録して,運動の周期、運動方向の左右性、光反応性などに相関が認められるか否かを解析した。その結果,1)根は幼葉鞘より周期が短く,幼葉鞘との同期性はないこと,2)幼葉鞘,根ともに左右両方向の回転が見られ,また方向の同調性もないこと,3)幼葉鞘とは異なり,根は赤色光下でも回旋運動をすることが分かった。これらのことから,根の回旋運動は幼葉鞘とは独立に制御されているという結論に達した。また,重力屈性変異体lazyの根は正常な回旋運動をしていることも判明し,回旋運動の機構についても幼葉鞘との違いが浮き彫りになった。回旋運動の方向性については,幼葉鞘と根の両器官で両方向の運動が観測されたことから,イネでは遺伝的に決まっていないと言える。
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© 2003 日本植物生理学会
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