日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ニッケル耐性タバコBY-2培養細胞の生理・生化学的特徴
*齋藤 彰宏樋口 恭子飯島 一樹吉羽 雅昭
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p. 010

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抄録

一般植物のNi耐性機構を明らかにする目的で、段階的にNi濃度を700μMまで高めて継代培養したタバコ培養細胞BY-2からNi耐性変異株NITを選抜し、その生理的性質の分析とNi耐性に関わる分子の検索を行った。このNIT細胞に様々なストレスをかけて野生株と比較したところ、Cu過剰とAl過剰についても弱い耐性を示したが、顕著な耐性はNi過剰にのみ見られた。またNi添加量の増加に伴って細胞内のNi含有量も増加し、NITがNiを集積していることが分かった。細胞内Fe含有量もNi添加により増加したが、これは細胞内のNi過剰によりFe代謝が阻害され、NITのFe要求性が高まったためと考えられる。さらにNi添加によりMg含有量が増加しており、これまでに報告のあるMg活性化型膜トランスポーターの機能とNi吸収に関連性がないか現在検討している。一方でNIT細胞は野生株よりも相対的に有機酸を多く含有しており、また700μM Ni処理をした場合のNIT細胞で特異的にヒスチジンが3~5倍多く含まれていた。ヒスチジンや有機酸はNiとキレート化合物を形成しNIT細胞内でNi毒性を抑えている可能性が高い。加えてNIT細胞で特異的に分泌されるタンパク質が見つかっており、これら分泌タンパク質の配列解析を進めている。またプロトプラストと液胞を単離し細胞内のNi分布を明らかにしようと試みている。

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© 2004 日本植物生理学会
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