抄録
酵母の重金属輸送P-type ATPaseであるPCA1は細胞膜上に存在し、銅を細胞外に排出していると予測されている。またPCA1の変異タンパク質であるCAD2が銅の他にカドミウム輸送能を獲得し、細胞外へこれらの金属を排出することで細胞に銅及びカドミウム耐性を与えていることが知られている。これらのタンパク質は細胞内の重金属イオンのホメオスタシスと耐性機構に大きく関わっていると考えられるため、これらの遺伝子をシロイヌナズナに導入し、形質転換体の重金属耐性について解析した。
酵母のPCA1, CAD2遺伝子それぞれがCaMV35Sプロモーターの制御下で発現するコンストラクトを作成し、シロイヌナズナに導入した。 MS培地上での生長についてWTと比較したところ、PCA1, CAD2を導入したどちらの形質転換体も根の伸張が著しく抑制されていた。その後、これらの植物体を10 μM CuSO4を含むMS培地上に移植したところWTと同様に生育した。これは細胞内の銅イオンがPCA1, CAD2によって細胞外に過剰に排出され銅の欠乏が生じたために生長抑制が起こったと考えられる。またPCA1の形質転換体は銅に対して耐性を、CAD2の形質転換体は銅とカドミウムに対して耐性を獲得していた。以上の結果から、酵母のPCA1, CAD2タンパク質は植物内で機能し、細胞内の重金属イオンのホメオスタシスと耐性機構に大きく影響を与えることがわかった。