日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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生殖成長過程におけるニコチアナミン合成酵素とニコチアナミンアミノ基転移酵素遺伝子の発現
*高橋 美智子井上 晴彦潮 洋平中西 啓仁森 敏西澤 直子
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p. 012

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抄録

ニコチアナミン合成酵素(NAS)、ニコチアナミンアミノ基転移酵素(NAAT)は共にムギネ酸類(MAs)合成経路上の酵素である。MAsの前駆体であるニコチアナミン(NA)は植物に広く存在する金属のキレーターであるが、MAsはイネ科植物だけがもつ金属のキレーターである。NAを欠くタバコは不稔でありNAは双子葉植物の生殖成長に必須と考えられた(Takahashi et al., 2003, 15, 1263-1280, Plant Cell)。生殖成長におけるNAの役割を明らかにすることを目的とし、花と種子におけるNAS遺伝子の発現をレポーター遺伝子(GUS)を用いて解析した。またイネ科植物の生殖成長におけるNAとMAsの役割を明らかにするため、イネの花と種子におけるNAS、NAAT遺伝子の発現を同様に解析した。シロイヌナズナにおいてAtNAS遺伝子は花の各器官と維管束、さや、さやの維管束、若い種子、珠柄、胚に発現しており、分子種によって時期や発現部位に違いがみられた。イネにおいてもOsNASの発現は分子種によって時期や部位に差があった。またNAからMAsへの合成に関わるOsNAAT遺伝子の発現の時期や部位は、OsNASの発現と完全には一致しなかった。以上の結果はNAやMAsが花や種子への金属輸送に果たす役割だけではなく、胚発生においても重要な役割を持つことを示唆している。

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© 2004 日本植物生理学会
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