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ニコチアナミン合成酵素(NAS)、ニコチアナミンアミノ基転移酵素(NAAT)は共にムギネ酸類(MAs)合成経路上の酵素である。MAsの前駆体であるニコチアナミン(NA)は植物に広く存在する金属のキレーターであるが、MAsはイネ科植物だけがもつ金属のキレーターである。NAを欠くタバコは不稔でありNAは双子葉植物の生殖成長に必須と考えられた(Takahashi et al., 2003, 15, 1263-1280, Plant Cell)。生殖成長におけるNAの役割を明らかにすることを目的とし、花と種子におけるNAS遺伝子の発現をレポーター遺伝子(GUS)を用いて解析した。またイネ科植物の生殖成長におけるNAとMAsの役割を明らかにするため、イネの花と種子におけるNAS、NAAT遺伝子の発現を同様に解析した。シロイヌナズナにおいてAtNAS遺伝子は花の各器官と維管束、さや、さやの維管束、若い種子、珠柄、胚に発現しており、分子種によって時期や発現部位に違いがみられた。イネにおいてもOsNASの発現は分子種によって時期や部位に差があった。またNAからMAsへの合成に関わるOsNAAT遺伝子の発現の時期や部位は、OsNASの発現と完全には一致しなかった。以上の結果はNAやMAsが花や種子への金属輸送に果たす役割だけではなく、胚発生においても重要な役割を持つことを示唆している。