抄録
EMSを用いて作出したシロイヌナズナのpcb2 (pale-green and chlorophyll b reduced 2) 変異株は、野性株に比べて淡い体色が特徴で、クロロフィル含量が約1/3に減少しており、特にクロロフィルbが減少していた。葉緑体の形状と数は野生株と大きく変わらなかったが、葉肉細胞の電子顕微鏡観察を行ったところ、グラナスタックが極度に減少していることがわかった。その原因遺伝子をマッピングしたところ、第5染色体の上腕の約190kbの範囲にあることがわかった。この領域には49個の遺伝子がコードされている。細胞内局在予測プログラムを利用して、葉緑体への局在が強く示唆される遺伝子に注目して野生株と変異株の塩基配列を比較したところ、そのうちの1つの遺伝子で一塩基置換の変異が見つかった。この遺伝子はイントロンを持たず、コードされるタンパク質は417のアミノ酸で構成され、N末端に葉緑体移行シグナルを持っており、変異は29番目のグルタミンコドンを終止コドンに変える、ナンセンス変異であった。データベースを検索したところ、イネや光合成細菌から相同性の高い配列が見つかったが、いずれも機能はまだ分かっていないようである。
この遺伝子をpcb2変異の原因遺伝子と仮定して解析を進めている。