抄録
C. merolaeの葉緑体ゲノムには、4種の転写因子 (Ycf27-30)が保持されており、これらは環境の変化に応答して、主要な光合成遺伝子群の転写制御を行っていることが予想される。私達は、これらの転写因子が認識しているシグナルや標的遺伝子群の同定は、複雑な光合成系の転写制御機構の最も単純なモデルを提供することになると考えて研究を進めている。本大会では、1)Ycf30によるルビスコ遺伝子群の転写制御機構と、2)集光装置の形成に働く転写因子の検討について報告する。1)精製したYcf30タンパク質は、ルビスコ遺伝子オペロンの上流域に結合した。転写開始点決定の結果、ルビスコ遺伝子オペロンは一箇所の転写開始点からの転写が活性化されていることが強く示唆された。2)C. merolaeを強光下で培養すると、通常条件で培養したものに比べて黄緑色を呈したが、弱光条件へ移すと通常の青緑色へと変わった。これは、強光から弱光へシフトにより、集光装置の形成が起きたものと考えられた。そこで、強光条件から弱光条件へ移して3時間後までの転写産物量を調べたところ、cpcA遺伝子とycf29遺伝子の転写産物量の増加がみられた。この結果は、Ycf29が集光装置の形成に関わる転写因子である可能性を示唆した。現在、Ycf29と集光装置に対応した遺伝子群の発現制御機構の関連について検討中である。