抄録
ヒメツリガネゴケは、ファージタイプRNAポリメラーゼ遺伝子を2個(PpRPOT1、PpRPOT2)持ち、いずれも開始コドンとなり得る2個のAUGコドンが存在する。5′非翻訳領域と2個のAUGを含むN末端配列にGFPをつないだコンストラクトをヒメツリガネゴケに導入したところ、GFPの蛍光はミトコンドリア(Mt)にのみ局在し、どの組織でも葉緑体への局在は見られなかった。また、一番目のAUGから強制的に翻訳させると葉緑体(Cp)とMtに、二番目のAUGから翻訳させるとMtに局在するという結果が得られた。しかし、それぞれのAUGからの翻訳効率を調べたところ、2番目のAUGのみが翻訳開始コドンとして用いられていることが示唆された。これらのことは、単離CpとMtの転写に対するタゲチトキシンの効果や免疫ブロットの結果とも一致する。
一方、シロイヌナズナにはRPOT遺伝子が3個存在し、それぞれMt、Cp、そして両方へ輸送されることが知られている。両方に輸送されるAtRpoT;2は、PpRPOT1とPpRPOT2と同様にN末端に2個のAUGコドンを持つ.5′非翻訳領域と2個のAUGを含む配列にGFPをつないだコンストラクトを用いて、安定な形質転換体を作製しGFPの局在を観察したところ、Mtのみに局在していた。