日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナ葉緑体シグマ因子AtSig6の機能解析
*石崎 陽子角山 雄一幡野 恭子小堀 麻紀竹葉 剛中平 洋一椎名 隆
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p. 022

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抄録
植物の葉緑体ゲノムにコードされた光合成遺伝子の多くは、原核型のRNAポリメラーゼ(PEP)によって転写される。PEPのプロモータ認識と転写開始には、核にコードされたシグマ因子が関与する。バクテリアのシグマ因子には主要型と置換型が存在し、転写制御において重要な役割を担っている。高等植物にも複数の葉緑体シグマ因子が存在するが、その機能分担や転写制御における役割は十分に分かっていない。シロイヌナズナは6種の葉緑体シグマ因子を有する。本研究では、T-DNA挿入によるSIG6欠損株sig6-1を詳しく解析した。sig6-1は、発芽後初期の子葉の葉緑体形成が遅れ、子葉が薄緑色を呈した。これはPEPが転写する光合成遺伝子やtRNA、rRNA遺伝子の転写産物量が大きく減少したためである。Sig6依存遺伝子の上流には典型的なシグマ70型プロモータが見られることから、AtSig6がシグマ70型プロモータをひろく認識するシグマ因子であることが分かる。AtSig6はバクテリアの主要型シグマ因子に相当する機能をもち、子葉における葉緑体分化の初期段階で中心的な役割を果たしていると考えられる。一方、sig6-1でのPEP転写の異常と葉緑体発達の遅延は、8日齢実生ではほぼ正常に戻った。成熟葉緑体では、別のシグマ因子がAtSig6の機能を相補していると考えられる。SIG6過剰発現体の解析ついても併せて報告する。
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© 2004 日本植物生理学会
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