日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナ葉緑体のストレス応答シグマ因子 SIG5の解析
*永島 明知華岡 光正藤原 誠鹿内 利治金丸 研吾高橋 秀夫田中 寛
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 023

詳細
抄録
 独自のゲノムと遺伝子発現系を持つ葉緑体には、転写装置の一つとして真正細菌型RNAポリメラーゼ(PEP)が存在する。PEPは主として光合成遺伝子の発現に関わっており、葉緑体の機能発現に必須である。PEPのコア酵素遺伝子群が葉緑体ゲノム上に存在するのに対し、PEPにプロモーター認識特異性を与える6種のシグマ因子(SIG1~6)は核染色体にコードされ、葉緑体機能の構築や修復に関わることが示唆されている。
 我々はストレス時における葉緑体転写制御に興味をもち、ストレスで誘導されるシグマ因子の検索を行った。その結果、SIG5の発現が強光、塩、浸透圧、低温ストレスにより、転写レベルですみやかに誘導されることを見出した。さらに、新たに同定したSIG5遺伝子のT-DNA挿入変異(sig5-2)株を用いた解析の結果、psbDの光誘導プロモーター(LRP)からの転写が強くSIG5に依存していることが明らかになった。これまでも、(青色)光がSIG5を介してpsbD-LRPの転写誘導に関わることは示唆されてきたが、本研究によりこの応答が光のみならず広範なストレスに対応した転写制御であることが明らかになった。強光ストレス後のPSII活性の回復過程をクロロフィル蛍光で観察したところ、sig5-2株では野生株に対する若干の修復の遅れが見られる。従って、SIG5による遺伝子発現制御は、ストレス下で損傷した光合成活性中心の修復に関わると考えることができる。
著者関連情報
© 2004 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top