抄録
グルタミン合成酵素は植物において窒素同化の中心的役割を果たすキー酵素の1つであり、維管束細胞の細胞質(GS1)と葉及び根の葉緑体(GS2)においてアンモニアをグルタミンへ同化させる。C3植物の葉において光呼吸で生成されたアンモニアはGS2ミGOGAT系で再同化を受ける。以前、我々はアグロバクテリウム法による核の形質転換によってGS2を過剰発現する形質転換タバコを作成した。このGS2 高発現体では光呼吸能が高まり、強光ストレスに対して耐性を示した。しかしGS2の発現レベルは野生型の最大3倍であった。一方葉緑体形質転換法を用いると、導入遺伝子の高発現が期待される。そこで今回、イネGS2遺伝子を葉緑体ゲノムに導入したGS2 高発現タバコの作成を試みた。
葉緑体移行ペプチドを除いたイネGS2 cDNAを、緑葉で強力に発現するタバコpsbA 遺伝子のプロモーターと5'-UTRから発現させた。GS2 発現カセットは選択マーカー遺伝子 (aadA) と共にタバコ葉緑体ゲノムのIR 領域に相同組み換えによって導入した。得られた形質転換体の葉においてGS2タンパク質の発現レベルは野生型の30~40倍に増加していた。また、GSの酵素活性も7~9倍に増加していた。一方、根におけるGS酵素活性は野生型と顕著な差異が認められず、組み換えGS2の発現は高い器官特異性を示すことがわかった。現在この形質転換体の生理学的特性を解析中である。