抄録
アラビドプシスのacetolactate synthase (ALS)遺伝子をジーンターゲッティングにより除草剤感受性型から耐性型へ置換する実験を行った。すなわち、除草剤耐性を付与する塩基置換を有し、5ユ領域を欠失したALS 遺伝子断片をin planta transformationにより導入し、後代種子約78万粒を除草剤選抜したところ、4個体の耐性個体が得られた。詳細な解析の結果、導入した塩基置換が確認された2個体のうち1個体ではdouble cross over modelにより説明可能なtrue gene targetingが生じ, もう1個体ではectopic gene targetingが生じたことにより除草剤耐性を獲得したと考えられた。ターゲッティングベクターにゲノム由来の塩基配列がコピーされ、それが再びゲノムに挿入される、ectopic gene targetingにより説明可能な現象はこれまでにも報告されているが、シークエンスレベルで解析した例はない。本研究により、ジーンターゲッティングによる塩基置換の導入が可能であることが示されたが、その実用化には、頻度の向上とともに、同時に起こりうるectopic gene targetingの機構についてもその解明と頻度の把握が求められることが明らかになった。