抄録
我々は単子葉のモデル植物であるイネで相同組換えを介した遺伝子ターゲティング法の開発を行い、Waxy遺伝子を標的モデルとして再現性のある実験系を確立した。Waxy遺伝子座では極めて正確な組換えが生じ、次世代にメンデル遺伝していることを明らかにして、昨年までの本大会でその成果を報告した。我々のターゲティング法は強力なポジティブ・ネガティブ選抜法を基本とし、Waxy以外のイネ遺伝子も改変できると考えられるので、その可能性を複数の遺伝子について検討を進めた結果、Waxy以外のイネ遺伝子でも相同組換えによる遺伝子ターゲティングができることが明らかになってきた。今回は、第11番染色体短腕にタンデムに2コピー存在するアルコール脱水素酵素遺伝子 (Alcohol dehydrogenase) のターゲティングの概要を報告する。Adh1とAdh2は互いの遺伝子のコード領域の相同性が極めて高いが、イントロンとプロモーターの塩基配列は異なり、両遺伝子座周辺にはレトロトランスポゾンも存在する。Waxy遺伝子ターゲティングと同様のポジティブ・ネガティブ選抜マーカーを持つ基本ベクターに各々Adh1とAdh2の相同領域を導入したベクターを構築して実験を行った結果、ターゲティングされたと考えられる形質転換カルスが得られ、我々の技法がイネの遺伝子を汎用的に改変出来る可能性が示唆された。