日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

サイレンシングの回避による導入遺伝子発現の安定化
*瀧田 英司紀 美佐奥山 恵理新名 惇彦柴田 大輔
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 034

詳細
抄録
遺伝子導入植物では独立した遺伝子導入個体間で導入遺伝子発現のばらつきが生じ、導入遺伝子が安定発現している個体の獲得がしばしば困難となる。ばらつきの原因のうち導入遺伝子の周辺環境の違いに着目し、これを一定にすることにより遺伝子導入個体間での導入遺伝子発現の安定化を試みた。
導入遺伝子の周辺環境を一定にするために、長鎖DNAを植物に導入可能なバイナリーベクターであるTransformation-competent Artificial Chromosome(TAC)ベクターを改良し、両端に一定配列の長鎖(32 kb、41 kb)DNAを付加した状態で遺伝子導入できる改良TACベクターを開発した。効果を調べるため、改良TACベクターを用いβ-glucuronidaseGUS)遺伝子をシロイヌナズナに導入し、GUS遺伝子コピー数、mRNA蓄積量、GUS活性等を調べた。
その結果、コントロールであるTACベクターによる遺伝子導入シロイヌナズナ個体間でのGUS活性のばらつきの主な原因は、導入遺伝子の染色体上での挿入位置の影響(位置効果)ではなく、複数のGUS遺伝子が導入された個体でのジーンサイレンシングであると考えられた。これら個体ではGUSmRNA蓄積量の低下、20-25 ntの小分子RNAが確認されたことからPTGSが起こっていると推察され、改良TACベクターはこれを回避し発現を安定化していると推察した。改良TACベクターを用いた場合、導入遺伝子を1コピー持つ個体をコントロールの約2倍の確率で獲得できることもわかった。
著者関連情報
© 2004 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top