日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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インスレーターによる導入遺伝子発現のばらつきの抑制
*長屋 進吾加藤 晃吉田 和哉新名 惇彦
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p. 035

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抄録
 導入遺伝子の発現は、個体間で大きく異なることが知られている。これは位置効果と呼ばれ、導入遺伝子の染色体上の挿入位置に依存した現象と考えられている。動物での知見から、真核生物の染色体上では多様なクロマチン構造が形成され、遺伝子発現に影響を与えうることが示されている。このため位置効果を抑制するには、導入遺伝子を周辺の染色体構造から保護することが必要と考えられる。
 我々は染色体の構造上の境界として機能すると考えられるインスレーターを用いて位置効果を抑制できるか解析した。ウニ由来のArs(Arylsulfatase)インスレーターをCaMV(cauliflower mosaic virus)35Sコアプロモーター(90 bp)-GUS(β-glucuronidase)遺伝子の5'上流に付加してタバコ培養細胞BY2の染色体上へ導入し、独立した50クローンについてGUS活性染色を行った。インスレーターを付加していない対照遺伝子では、有意なGUS活性が認められるクローンは約6割であったが、インスレーターを付加した場合では全クローンにGUS活性が認められた。この結果から、Arsインスレーターは個体間における導入遺伝子発現のばらつきを抑制できることが示された。現在、インスレーターの欠失解析を行い機能領域の限定を行っている。
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© 2004 日本植物生理学会
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