抄録
イネの内在性レトロトランスポゾンTos17が培養細胞特異的に転移する性質を利用して、これまでに約5万系統のTos17が転移した日本晴系統を作出した。再分化植物ではTos17の転移活性は完全に抑制されるので、Tos17挿入変異は安定した遺伝解析材料として利用できる。また、Tos17挿入部位は、Tos17末端領域のプライマーを用いて挿入隣接領域の塩基配列を決定し、大部分の領域がすでに明らかになっているイネゲノム塩基配列を検索することでbpの精度で解析できる。
これまでに、およそ6000系統の隣接塩基配列解析を行い、47,000件の塩基配列情報が得られている。また、来年度には、全系統の圃場での表現型調査が完了する予定となっている。これらのTos17挿入による破壊部位と、観察した表現型データはリレーショナルデータベースに整理されている。このデータベースよりユーザが興味を持つ遺伝子をクエリにしてTos17破壊部位を検索するWWWページ(http://tos.nias.affrc.go.jp/)を公開して運用している。このシステムを利用したin silicoミュータントスクリーニングと解析のポイントを紹介する。