日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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リン酸欠乏時におけるシロイヌナズナMGDG合成酵素遺伝子の発現誘導と植物ホルモンによる制御機構
*小林 康一高宮 建一郎太田 啓之
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p. 047

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抄録
 リンは植物にとって最も重要な栄養素の一つであり、その不足に対し、植物は様々な応答を示す。最近の研究から、そのリン酸欠乏適応機構の一つとしてプラスチド特有の糖脂質の合成が活性化され、プラスチド外で不足したリン脂質を糖脂質で補っている可能性が示された。
 我々はシロイヌナズナを材料にモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)合成酵素の解析を行っている。これまでの解析から、シロイヌナズナにはtypeA (MGD1), typeB (MGD2,3)の2つのタイプのMGDG合成酵素が存在することを明らかにし、そのうち、typeBのみがリン酸欠乏に応答して発現が上昇することを示した。リン酸欠乏時におけるtypeB遺伝子の発現解析を行ったところ、リン酸欠乏応答した根におけるtypeBの発現がオーキシン輸送阻害剤によって抑制されることが分かった。オーキシン処理により発現が再び見られるようになったことから、これらの発現にオーキシンが必要であることが分かった。一方、サイトカイニン処理によりtypeBの根での発現が抑制されたことから、これらのホルモンがリン酸欠乏時におけるtypeBの発現に拮抗的に作用している可能性が示された。これらの遺伝子は通常の条件下ではどの植物ホルモンにも応答を示さないことから、リン酸欠乏時におこるtypeB遺伝子の発現誘導にはホルモン以外の他のシグナルも必要であると考えられる。
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© 2004 日本植物生理学会
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