日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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サイトカイニン受容体をコードするAHK遺伝子群の変異解析
*西村 千佳大橋 芳佐藤 修正加藤 友彦田畑 哲之上口 智治
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p. 053

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抄録
サイトカイニンは細胞分裂の促進を通して植物の生長の多くの局面に作用すると考えられている植物ホルモンである。種々のホルモン投与実験や過剰生産植物体の解析からその機能的重要性は示唆されてはいるが、植物の生長において内在性サイトカイニンがいかなる機能を果たすかについてはよくわかっていない。最近サイトカイニン受容体をコードするAHK4遺伝子が同定されたが、その機能欠失変異体は何らの特異的表現型を示さなかった。我々はAHK4とファミリーを形成するAHK2AHK3両遺伝子の機能欠失変異を同定し、多重変異体株を作成することで生理機能の解析を試みた。外性サイトカイニンに対する応答性の低下から、これらもAHK4同等にサイトカイニン受容体として機能することが示された。ahk2 ahk3二重変異体はシュートで弱い半矮性の表現型が、ahk2 ahk3 ahk4三重変異体は全身的に著しい生育阻害が観察された。本葉の成育過程解析および根端の組織学的観察から、本葉の矮化や根の生育阻害は細胞分裂活性の低下に伴う細胞数の減少に由来することが判明した。AHK遺伝子群の発現はおおむねオーバーラップしており、種々の分裂組織や維管束に強く、植物全体にわたっている。これらの結果から、植物の様々な組織・器官において、サイトカイニンが受容体の機能を通して細胞分裂活性の昂進と維持を行い、植物の生長を促すことを示している。
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© 2004 日本植物生理学会
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