抄録
種々の酸素発生型光合成生物から単離した光化学系(PS) I における初期電子供与体P700の酸化還元電位を、透明薄層電解セルをもちいた分光電気化学測定で求めた。好熱性シアノバクテリア Thermosynechococcus elongatusのP700酸化還元電位 (+425 mV vs. SHE) はホウレンソウ (+475 mV)に比べ、50 mV程度低いという結果が得られた。T. elongatus, ホウレンソウP700の酸化還元電位は高濃度のTriton X-100でPS Iを処理しても10 mV以下しか変化しないことから、T. elongates, ホウレンソウで見られたP700酸化還元電位の差はPS Iの単離・精製時の界面活性剤処理で生じたのではなく、両生物のP700に固有の性質であることがわかった。さらに他の生物についてP700酸化還元電位の測定をおこなったところ、シアノバクテリア Synechochoccus PCC6301, 緑藻 Chlorella vulgarisのP700は+453 mVとT. elongatusとホウレンソウの中間の値を示すことがわかった。以上の結果から、酸素発生型光合成生物のP700はその酸化還元電位から少なくとも3つのタイプに分類できる可能性が示唆された。