抄録
我々はこれまでにcDNAマイクロアレイ解析により,シロイヌナズナの根において暗所で発現量の増加する遺伝子群を特定している.これらの遺伝子の多くは暗処理に続く遠赤色光(FR)照射に応答して発現量が減少する.この遺伝子群には6つの水チャネルタンパク質 (AtTIP1;1, AtTIP1;2, AtTIP2;1, AtTIP2;2, AtPIP1;2, AtPIP2;3) 遺伝子が含まれていた1).
これらの水チャネル遺伝子のFR応答機構を調べるために,まず暗順応処理およびそれに続くFR連続照射を行ったシロイヌナズナ(Ler)の根において,AtTIP2;2の発現量の経時変化を追跡した.その結果,FR照射1時間でmRNA量の顕著な減少が見られ,その後増加に転じる事が分かった.このmRNA量の変化が水チャネルタンパク質の発現量に対応しているのならば,シロイヌナズナの根の水分動態もFR光に応答して変化している可能性がある.
現在,このFR光応答にかかわる光受容体を特定するためにフィトクロム変異体を用いたノザン解析を進めている.また,シロイヌナズナにおける水動態の経時的変化を解析するためにMRIを用いた研究を進めており,これらの結果も合わせて報告する.
1) Sato-Nara et al., 2003, Plant Cell Physiol. 44 suppl.: 150