日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ホウ素トランスポーターAtBOR1の転写後制御
*高野 順平三輪 京子林 浩昭米山 忠克Nicolaus von Wiren藤原 徹
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p. 083

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抄録
 ホウ素は植物に欠乏害と過剰害の両方を引き起こしやすい必須栄養元素である。シロイヌナズナBOR1は、導管への積極的なホウ素輸送を行う排出型ホウ素トランスポーターであり、低ホウ素条件下に地上部のホウ素濃度を十分に保つ役割をもつ。本研究では、BOR1のホウ素栄養条件による制御を活性、タンパク質蓄積、RNA蓄積の各レベルで解析した。
 低ホウ素条件およびホウ素十分条件で前処理した植物についてホウ素安定同位体を用いたトレーサー実験を行ったところ、BOR1による導管へのホウ素輸送は、低ホウ素条件により誘導されることが明らかになった。しかし、定量的RT-PCR解析の結果、BOR1 mRNAの蓄積量にはホウ素栄養条件による大きな影響はみられなかった。一方、35Sプロモーター制御下でBOR1-GFP融合タンパク質を発現する形質転換植物においてwestern解析を行ったところ、BOR1-GFPタンパク質の蓄積量は低ホウ素条件下で増加し、ホウ素十分条件下で減少した。
 以上より、BOR1はホウ素栄養状態によって翻訳時あるいは翻訳後に制御されていることを示した。植物は、低ホウ素条件下にBOR1を発現させ地上部のホウ素欠乏害を防ぎ、ホウ素十分条件下にはBOR1の発現を抑えホウ素の過剰な蓄積を防いでいると考えられる。
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© 2004 日本植物生理学会
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