日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ポジトロン放出核種15Oを用いた植物茎における水動態解析
*田野井 慶太朗大矢 智幸北條 順子鈴木 和年中西 友子
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p. 091

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抄録
植物茎内における微量の水吸収速度を定量するため、植物体を非破壊に解析するための装置を開発した。水のトレーサーとして、ポジトロン放出核種15O(半減期122秒)を用いた(以下、[15O]water)。
定量性を得るために、擬似的な茎を線源として作成しキャリブレーションを行った。また、検出器で測定後の植物茎を切り出し、含まれる[15O]waterを定量する実験を行い、定量性を再確認した。
次に、播種後約3週間目のダイズの根から[15O]waterを吸収させ、上胚軸1cm部分における[15O]water 量の変化を測定したところ、5分後以降線形的な増加が示された。吸収開始15分後の[15O]water量は約15 μlであった。当初の予想では、導管内が[15O]waterで満たされた時点で、[15O]water量はプラトーに達すると思われた。そこで、検出部位の導管体積を測定したところ、2.1±0.3 μlであった。よって、線形的な増加が始まる5分後までには導管内が[15O]waterで満たされ、その後周囲組織へ漏出している可能性が示唆された。この導管漏出流は水平方向の流れであり、茎からの蒸散(蒸発)を補っている可能性が確認された。実際に植物全体の茎をワセリンでカバーしたところ、植物全体の蒸散量は約3/4に減少した。
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© 2004 日本植物生理学会
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