抄録
無機イオンは根から取り込まれ、アポプラスト(AP)を通って輸送される。輸送された無機イオンは到達した器官で、光合成、細胞伸長などをはじめとする様々な生理作用に関与している。このことはAPに含まれる無機イオンの変動を調べることが、植物の生長制御を理解する上で重要な意味をもつことを示している。野崎ら(2003)が開発したプレッシャーチェンバー法によってAP液を採取し無機イオンの経時的変動を調べた。材料にはアサガオ(Pharbitis nil cv. Violet)を用いた。芽生えを下胚軸で切り、根(R)および子葉(C)のついた側の切り口から浸出してくる液を0MPaのAP液(R0、C0)としてそれぞれ採取した。その後、プレッシャーチェンバーで根には0.5MPa、子葉には1MPaの圧力をかけAP液(R0.5、C1)を採取した。イオンクロマトグラフィーでイオンの測定をした。まず平均的なイオンの組成を調べた。C0に含まれる多くのイオンの濃度がR0よりも約2倍高かった。しかし圧力をかけたAP液を比較すると、C1よりもR0.5の方が濃かった。また根側のAP液にはNO3-は検出できたが、子葉側のほうでは検出されなかった。次に子葉側のAP液の陽イオンの経時的変動を調べた。C0ではSD処理をするとCa2+の濃度がSD処理をしないときよりも高くなった。またC1のK+、Mg2+、Ca2+では周期性が見られた