抄録
我々は、ラン藻Synechocystis PCC6803のヒスチジンキナーゼ遺伝子の網羅的破壊株のDNAマイクロアレイ解析から、ヒスチジンキナーゼHik33が低温、高浸透圧、強光など、様々な環境ストレスの検知に関わるセンサーであることを見いだしている。それぞれの環境条件でHik33により発現制御を受ける遺伝子群は、いずれの条件によっても共通に発現誘導が見られる遺伝子のほかに、それぞれの条件で特異的に発現の制御が見られる遺伝子が多数見いだされた。これらの結果は、Hik33が異なる環境シグナルを検知し、異なる遺伝子群を制御するきわめて特異なヒスチジンキナーゼ(マルチストレスセンサー)であることを示している。我々は、Hik33と相互作用しシグナルの分配に関わる因子の存在を予想し、酵母2ハイブリッドスクリーニングにより81アミノ酸からなる新奇タンパク質をコードする遺伝子(ssl3451)を同定した。この遺伝子を破壊した株では、Hik33によりストレス条件下で発現誘導が見られるhliB-slr1544遺伝子の発現が、通常の培養条件においても誘導され、ストレス条件下での発現レベルが野生株に比べて低下していた。これらの結果は、この新奇タンパク質はHik33と相互作用することによりその活性を制御する因子であることを示唆している。