抄録
酸性土壌で発現するAlストレスに対し、イネは最も高い耐性を示す作物の一つである。イネは、有機酸放出非依存型のAl耐性機構を備えている可能性が高いが、その詳細なメカニズムは明らかにされていない。本研究では、Al耐性の異なるイネ2品種(コシヒカリ、Al耐性;カサラス、Al感受性)を用い、根端や地上部へのAlの集積に着目してイネのAl耐性機構を解析した。コシヒカリおよびカサラスの根伸長は、それぞれ50μM、15μM Alにおいて50%抑制され、この抑制率はAl処理開始後5時間から24時間まで常に一定であった。根伸長が50%抑制されるAl処理条件において、根端におけるAl集積量を比較したところ、両品種はほぼ同量のAlを集積していた。さらに、50μMAl処理において、コシヒカリではカサラスに比べ根端におけるAl集積量は低いものの、地上部のAl含量は高かった。これらの結果から、両品種において、Alによる根伸長抑制は根端Al集積量に依存する事、さらに、コシヒカリはカサラスに比べ地上部へのAl移行能力が高いために根端中のAl集積量が低くなりカサラスよりも高いAl耐性を示す可能性が示唆された。