抄録
植物根端の回旋運動にAlが与える影響を、超高感度カメラを用いて解析した。実験サンプルには播種後3~4日目のイネ(Oryza Sativa L., cv. Nipponbare)を用いた。水耕液のpHは全て4.5で行った。
0.2μMCaCl2水耕液中ではイネ根端の回旋運動は、根長が約1cmに達してからあらわれ、根端から1.5mm付近で大きく屈曲した。また屈曲の角度(回旋角度)は平均して伸長方向に対して20度程度であり、根端が1回転するのに要した時間(回旋周期)は約50分であった。正常な回旋運動を示しているサンプルの水耕液をAl処理液に入れ替えても回旋周期に変化は見られなかったが、回旋角度はただちに減少、停止した。その後Al処理濃度が5および10μMの場合は回旋運動の再開が認められたが、50μMの場合は再開は確認できなかった。Al処理濃度が高くなるにつれて回旋運動はより短時間で停止し、再開までの時間は長くなる傾向にあった。
また、Al障害の指標として用いられる根伸長阻害についても調べたところ、Al処理濃度が5μMの場合については根伸長阻害は確認されなかった。しかし同一条件下で回旋運動の抑制が見られたことから、今回確認されたAlによる根端の回旋運動の抑制は根伸長阻害よりもAl毒性の初期の影響であることが初めて示唆された。これは同時に、Alの毒性が根の伸長と根端の回旋運動という二つの異なる運動にそれぞれ影響を与えるということを示唆するものだと考えられる。