抄録
複合形質であるAl耐性に関与する遺伝子群の特定には、自然のバリエーションを活用
することは非常に有用である。これまでに、我々はColumbia (Col)×Landsberg
erecta (Ler) RIラインを用いてAl耐性に関与するQTL (quantitative trait locus)
を複数推定している。これらの遺伝子座にはシロイヌナズナ種内のAl耐性のバリエー
ションを説明する遺伝子が存在するが、それらはColとLerのAl耐性の差異に基づくも
のだけである。先に報告したように、コレクションされている約260のアクセッショ
ンについてAl耐性を評価したところ、非常に異なったAl応答を示し、ColとLerの形質
値にはみられない値をとるアクッセッションが多数存在した。従って、シロイヌナズ
ナ種内にはCol、LerのAl耐性差異に基づく対立遺伝子で説明できない多くの遺伝要素
が存在すると考えられる。そこで、先とは異なるLer×Cape Verdi Island (Cvi)RIラ
インを用いてQTL解析を行った。その結果、今回推定された単因子QTL及び、エピスタ
シスの内、先のLer×ColのRIライン集団から推定されたQTLと同じ染色体上ポジ
ションに存在するものもあった。しかしながら、多くは異なる新規のAl耐性QTLであ
り、シロイヌナズナ種内のAl耐性のバリエーションを説明できる新規のQTLが明らか
となった。