抄録
[目的]高等植物のペルオキシソームは、個体の生長において脂肪酸代謝や光呼吸に関与する重要なオルガネラである。近年、他の生物種のペルオキシソーム研究から、ペルオキシソームの形成維持に関わる因子群(ペルオキシン)が26種報告されているが、その大部分の生理機能は未だ明らかでない。そこで我々は多細胞生物におけるペルオキシソーム形成とその機能調節を統合的に理解することを最終目的として、シロイヌナズナペルオキシンを全て網羅しRNAiを用いた機能解析を行った。
[結果]相同性検索によりシロイヌナズナゲノム上には、15種21個のペルオキシンホモログが存在することがわかった。次にGFPにペルオキシソーム輸送シグナル(PTS)を付加したタンパク質を発現しているシロイヌナズナを親株として、それぞれの因子を単独でまたは重複してRNAiにより遺伝子発現を抑制し、GFPの蛍光パターンを中心にいくつかの器官・組織における表現型解析を行った。その結果、それぞれの遺伝子抑制株が、(1)GFPが細胞質に留まるもの(2)ペルオキシソームが巨大化するもの(3)ペルオキシソームの形が変わるもの(4)全く親株と変化がないものに分類された。また、いくつかの個体では各器官・組織・生長過程によってGFPのパターンが変化したことから、これらの因子の機能発現が植物個体全体で一様ではないことも示された。